こんにちは。SAWA医療設計、代表の澤です。
先日テレビのニュースに、小池東京都知事とお笑い芸人のピコ太郎さんが出ていました。内容は、東京都が新たに開始するLED電球の交換事業に関してで、白熱電球を2個持参するとLED電球1個に交換してもらえるというものでした。
東京都は、LED電球100万個に15億円の予算を付け、年間23.4億円の電気代の削減を試算しているようです。照明器具を利用したこの政策、都民の立場たっても環境面からも興味深いものです。
病院建築においても、照明器具はとても大切な設備です。それは病院が患者さんの治療の空間であると共に、病気が治癒するまでの生活の場でもあるからです。
そこで今回は、病室の照明の光にスポットをあてた、2つのお話をさせて頂きます。
最近テレビの健康番組で多く取り上げられてみなさんもご存知のよう、人間には体内時計というものがそなわっています。そして朝起きて、活動し、眠るという一日のサイクルにおいて、自然光や照明などの人工的な光がその体内時計に大きな影響を与えていることも、また明らかにされています。
患者さんにとって病室は治療の場と同時に、様々な病気を治癒させるまでの生活の場ともなります。しかし一日中ベッドの上にいて、一日の移り変わりを感じないような単調な入院生活送っていると、体内時計のリズムも弱ってしまいその結果、患者自身の治癒力も低下していくようです。
研究と技術の進歩のなか近年では、光の色や明るさをコントロールすることのできるLED照明器具と、タイマーと連動させたスケジュール運転が可能な照明システムが、病院の病室やデイルームに取り入れられています。
この照明システムによって、患者さんはベッド上においても、朝、昼、夕方、夜など一日の時間の変化を色や明るさを通して感じとること出来るようになります。そしてそのことが、体内時計の調整をサポートすることにつながっているようです。
入院経験のある方なら分かると思いますが、もう一つ病室のベッドで夜中に感じる人工的な光があります。完全に熟睡されている方は除きますが、それは看護師さんが夜中の見回り時に、患者さんの様態を確認する時に使うハンディライトの光です。
ナイチンゲールはクリミア戦争の1854年当時、戦地病院において傷ついた兵士の看護にあたっていました。そして夜中になるとオイルランプを片手に、兵士一人一人の様態を診ていたことから、”ランプを持った天使”と呼ばれていました。形はちょっと違いますが、上の写真のようなオイルランプの優しい光は、病室いた兵士の傷ついた身体と心に優しく届いたに違いありません。
時は越えてナイチンゲールが戦地にいた時代から160年後の現在、看護師さんの手に持つ器具は、オイルランプからLEDのハンディライトに変わりました。しかし看護師さんは変わらず、暗い病室で患者さんたちが眩しくないよう、ライトを病室の壁や天井にあてた優しい反射光をつかいながら、毎晩患者さんたちを見守り続けています。
ちなみに上の写真は、小樽の北一ガラスのCAFEの画像です。タイムスリップしたような暗がりに灯るオイルランプの優しい光、みなさん一度見に来てください。