こんにちは。SAWA医療設計、代表の澤です。
表題の問題、建築基準法や医療法では病院の病室において、採光と換気の規定があります。病室の採光に関しては、部屋の面積の7分の1以上、換気に関しては20分の1以上という規定が定められています。
さて問題の答えですが、それは換気です。換気は機械換気における代替が、定められた規定を満足していれば認められています。一方採光は、いくらLED照明などの設備が進歩している現代においても、自然の採光をとることとなっており、照明設備での代替えは建築基準法において認められていません。
現代の病院建築における病室は、採光や換気などの法的に基準をクリアをすることはもちろん、治療空間であると共に治癒するための生活の場として、患者さんの視点に立ち仕切家具や設備を駆使しながら、プライバシーやアメニティの充実が実現されています。
ちなみにみなさん、昔の医療施設の病室や診察室は、どんな雰囲気だったと思いますか。上のモノクロ写真、見た通りかなり古いもので、今から50年ほど前の北海道小樽市の有床診療所のものです。左に病室の内観、右はこの診療所の新築工事の時のもので、1階の主玄関前あたりが写っています。
現代の病院建築において、病室を含む各部屋の換気はほとんどが機械式での換気となっています。病室は当然ながら冷暖房完備の24時間空調システムが整備されており、患者さんは外の気候に関わらず快適な環境なかで生活することが可能です。
しかし50年前の病院の病室には、寒さ対策としての暖房設備がありましたがもちろん冷房もなく、法的に必要であった換気も自然換気、つまり窓からの自然に入ってくる空気の流れにたよっていました。
病室の換気の大きな目的、それはずばり患者どうしの感染防ぐことです。そのため自然換気の場合は、自然の空気の流れをつくって入れ代わりやすくすることと、また患者1人あたりの気積(空気の体積)を大きくすることが求められていました。
写真の病室内観の写真、モノクロのですがその室内の明るさから病室に十分な窓面が確保されていること、さらにドクターが入ってきている病室の扉の上部にも欄間の窓が設けてあることが解ります。この病室の外気に面する窓面と、病室の扉上部の欄間窓、そして外気に面する廊下窓面へと、3段階で空気の流れをつくっています。
さらに、ドクターの身長や扉の高さ、欄間の大きさから察すると病室の天井は2m50cm以上もあり、現代の病室の平均的な天井高2m30mほどより高く気積の確保もされており、本来の病院建築が目指すところの感染面での工夫がなされています。
今度は自然採光に着目してみましょう、50年前の医療施設に何か採光面での工夫はあるのでしょうか。右の工事中の写真をよ〜くて下さい、右下にガラスブロックの窓が付けられています。
私だけではないでしょうが、子供頃にあった病院は、外壁が白く、玄関まわりにはタイルが貼られていたように記憶しています。また病院のメイン玄関近くには、写真のようなガラスブロックの窓が使われていたことを覚えています。
このガラスブロックという材料厚さは10数センチ、ガラスとガラスの間に真空に近い空気層があり、断熱性と遮音性、さらに自然光は通すが視線は遮るという病院に適した材料です。写真のガラスブロックのお部屋は、待合室横にあった診察室です。
こちらの診療所、今から51年前の昭和41年6月1日に開院、病室内の写真がローアングルから撮られているのは、私が5歳の時に家にあったカメラで撮ったからです。回診で病室に入ってききたドクターも、思わず笑ってしまったようですね。