こんにちは。SAWA医療設計、代表の澤です。
前回の”病院 のLCCにおける3つの視点→【B】病院は24時間365日稼働している”では、① 建設費 と④ 修繕・設備等更新費に関しての企画・設計段階での注意点を説明しました
今回は”病院 のLCCにおける3つの視点→【C】医療の将来動向は予測が困難”その対応策に関してお話しします。
2025年問題に向けて国は、社会保障費抑制のための政策を徐々に提示してくると考えられます。しかしながら、現時点で10年先の診療報酬などの動向を見通すのはなかなか難しいことです。
そこで今回は、病院を新築・増築する場合の企画・設計段階での見落としがちな2つのチェックポイントをお話します。
このポイントは、将来的に新たな診療報酬の獲得や医療法への対応する際、病院ライフサイクルコストとしての建設費やその他病院運営に大きな影響を与えますので注意して下さい。
SAWAでは、病院や施設の改修工事の調査・設計を多く手がけておりますが、その過程において1番頭を悩ませるのが、コンクリートの壁の存在です。コンクリートの壁は、大きく2つの役割を果たしています。
1つ目は、建物を支える構造としての役割(耐震壁)、2つ目は耐火性、耐水性の役割です。1つ目の構造としての役割を果たしている場合は、間取り変更などの目的でその壁を撤去することは不可能です。
2つ目の耐火性・耐水性のコンクリート壁の場合は、その代替案がありますので撤去可能です。しかし撤去時の騒音と振動は凄まじく、みなさん直感的に分かると思いますが、患者さんへはもちろん、医療サービスを提供するスタッフへの影響も大きくなります。
そこで、新築や増築の企画・設計段階から、将来的な間取り変更を起こす可能性がある部門には耐震に影響のない範囲で可能な限り、コンクリートの壁を企画・設計段階から入れないよう設計業者さんへお願いして下さい。例えば、外来部門での診察室や処置室の並び、病棟部門での病室間の壁や長い廊下の壁などです。このことで建物の変化に対する柔軟性はとても高まります。
これは、「せっかく隣の土地を手に入れることが出来たのに、増築する建物つなげるためには、本館の放射線部門をかなり改修しなければならない」という話しです。
上のような事にならないよう、新築病院の計画時においては、10年後に隣地で建物を増築するイメージを持ちながら、1、2階部分の廊下を計画すると、柔軟性に富んだ建築となります。
新築する際には自分の所有地だけでなく隣地にも着目し、初期の打ち合わせ段階から設計事務所さんや施工者さんに将来計画を視野に入れた考えを、伝えるようにして下さい。
他にもチェックポイントはありますが、上の2つのポイントは後からでは対応が不可能な大きな項目です、忘れずにご検討下さい。今回で病院のライフサイクルコストの話しは終了です、ありがとうございました。
今日の気温は30度を超し、やっと札幌にも”夏がきた“という感じです。