こんにちは。SAWA医療設計、代表の澤です。
前回のブログでは、”病院 のLCCにおける3つの視点→【A】建設費と総事業費のバランス”では、ライフサイクルコスト(LCC)の下記の5つの項目は連動していることを説明しました。
病院ライフサイクルコスト(LCC)の5つの項目
① 建設費 → 施設建設費用
② 光熱水費 → 電気・ガス・水道
③ 保全費 → 清掃・ゴミ処理・設備管理・警備
④ 修繕・設備等更新費 → 建築、設備機器の修繕、更新
⑤ 一般管理費 → 諸税・保険料・レンタル(リース)・消耗品
今回は”病院 のLCCにおける3つの視点→【B】病院は24時間365日稼働している”に関してお話しします。
“病院は24時間365日稼働している”これがオフィスビル等の施設との大きな違いです。更に動線の種類が多いことも病院建築の特徴の一つと言えます。そこで今回は①の建設費と④の修繕・設備等更新費に着目した2つのポイントをお話しします。
患者動線、医療スタッフ動線、医材やリネンの供給動線等、ワンフロアに様々な動線が入り混じる病院において、修繕・更新時の作業動線が更に加わることは、場合によっては病院の日常的な動線を妨げる事もあり、病院運営に与える影響も大きくなるので配慮が必要です。
例えば、中層階に位置するオペ部門において、可能であればサービス用のエレベーターや階段から、バックヤードを通ってオペ室周りに到達できる単独の搬入経路を確保出来れば、オペ部門の運営を妨げず、設備機器、医療機器、各仕上げなどの修繕・更新をスムーズに行うことが出来ます。
企画・設計段階から部門毎の修繕・更新計画を意識し、資材や機器の搬入経路の確保を検討してください。更に、医療機器や工事資材などの置場、作業スペースも実際には必要になりますので注意して下さい。将来の修繕・更新を意識出来れば、その期間も短縮されますし、④の修繕・更新費用の縮減にも繋がります。
上記の話しにも関連しますが、病院には比較的更新のし易い部門と、し難い部門があります。先のオペ部門に比べ低層階に位置する外来部門は、診療時間外、土日祝日をクローズすることが可能で、比較的、修繕・更新のし易い部門と言えます。
更新しやすい部門には耐久性は低いが安価なもの、更新しにくい場所には耐久性が高いものを選択されるとコストのメリハリがつき、①の建設費のバランスをとることが出来ます。
例えば、クローズ可能な外来部門とは真逆で、24時間365日稼働している病棟部門、その中で病室が面する廊下は、みなさんお気づきの通り修繕・更新のとてもし難い場所です。“①の建設費”がアップしても、廊下の腰壁や床面の仕上材、照明器具などの仕様は耐久性の優れたものを選択されることをおすすめします。
上にあげた2つの内容は、”①の建設費”を圧縮することだけに着目すると、必要のない通路、高い仕上材として省かれることが多く、後から”④の修繕・設備更新費”が増え、更にベッド調整やスタッフの負担が増えるなど、運営や収益にも大きな影響を与える、見落としがちな項目となっています。
「やっぱりこうしとけば良かった」と後悔しないよう、業者さんのアドバイスを聞きながら十分に検討を行なって下さい。
次回は、”病院 のLCCにおける3つの視点→【C】医療の将来動向は予測が困難”についてお話しします。