病院のLCC(ライフサイクルコスト)を抑える5つのコツと具体例

    運用段階でのライフサイクルコストの図

    こんにちは、代表の澤です!

    前回の記事では、病院のLCC(ライフサイクルコスト)について、

    • 初期費用の「建設費」はたったの2割
    • 残りの8割が「建物を建てた後にかかるコスト」
    • そのため「長期的なライフサイクルコストの視点」で検討することが重要!

    というお話をしました。

    特に、エネルギーの高騰や物価高の状況では、運用コストを少しでも抑えることが病院経営の安定につながります。

    そこで、今回の記事では、どうすれば病院のLCC(ライフサイクルコスト)が抑えられるのかについて解説します。

    SAWA

    この記事は、次のような人におすすめです。
    ・病院のLCCを抑える方法を知りたい人
    ・LCC削減の具体例を知りたい人
    ・新築や改修工事などで失敗したくない人

    この記事を読めば、病院のLCCを抑えるコツと具体例がわかります。

    病院の新築や増改築、または病院の改修事業をお考えの方は、知っておくべき内容かと思います。

    この記事では、病院専門20年の設計経験に基づき、病院の工事で失敗しないためのポイントと具体例を解説しています。ご興味のある方は、ぜひお読みください。

    目次

    短期的なコストではなく、トータルコストで考える

    初期費用としての建築コストと運用コストの両方を同時に検討することが重要です。

    北海道などの寒冷地の病院では、室温を保つために冬季(11月〜4月)に暖房を使用します。
    その対策として、外断熱や断熱窓を採用し、エネルギーロスを抑える方法を採用する場合があります。

    これにより ①建設費 は上がりますが、運用段階では ②光熱水費 が削減され、さらに断熱材がコンクリート躯体を保護することで ④外壁の修繕・更新費 も抑えられます。

    また、下記の例も、将来のメンテナンスコストを低下させる効果が期待できます。

    • 初期投資は高めでも、耐久性が高く、修繕費が少なく済む外壁・床材などを採用
    • 設備の統一で修理や交換コストを削減(メーカーや型式を揃える)など

    短期的なコストではなく、トータルコストで考える」ことが重要!

    エネルギーコストを最適化する設備や材料を選ぶ

    病院では、多くの電力を消費し、水道光熱費がかさみます。
    エネルギー効率の高い設備や建材を選ぶことが、将来の運用コストの削減に効果的です。

    長期的にコスト削減できる設備投資の具体例
    • LED照明の導入(電気代10〜20%削減)
    • 高効率空調設備(ランニングコスト30%削減)
    • 断熱性能の向上(冷暖房費20〜30%削減)など

    <失敗しやすいポイント>

    • 最新設備を導入しすぎて、イニシャルコストが増大
    • 設備の維持費を考えずに設計し、長期的にコスト増

    設備投資の優先順位を明確にする

    建築費の中で、大きな割合を占めるのが、医療設備や建築設備(空調・電気・給排水)です。

    これらの設備投資の優先順位をしっかり決めることで、不要な設備投資や過剰なスペックの導入を防ぎ、無駄なコストを削減できます。

    🔳例:空調機器の選定の例

    • 良い例:
      手術室やICUは高度な温湿度管理が必要だが、一般病棟ではそこまで厳格な管理は不要。
      病棟には省エネ型の空調システムを導入し、手術室には高性能空調を適切に設置。
    • 悪い例:
      すべての病室に手術室と同等レベルの空調を導入し、結果として導入コストと運用コスト(電気代・メンテナンス費)が大幅に増加してしまう。

    スタッフの動線を考慮したプランで、人件費の無駄を最小限に抑える

    非効率な動線やプランは、医療スタッフの人件費にも影響します。
    効率的な動線や建築プランは、医療スタッフの作業負担を減らし、将来的な人件費の無駄を省きます。

    🔳例:ナースステーションの配置の例

    • 良い例:
      ナースステーションを病棟の中央に配置し、病室を放射状に配置することで、看護師がどの病室にも最短距離でアクセスできる
      (メリット:移動時間の短縮、巡回の効率化、患者対応の迅速化)
    • 悪い例:
      病棟の端にナースステーションを設置し、端の病室まで行くのに長い距離を移動しなければならない
      (デメリット:巡回時間が長くなり、スタッフの負担増加、人員を増やす必要)

    最後に:LCCを検討するための「比較表」を業者に依頼しましょう!

    各指標毎に、下記ような項目が記載された比較表の作成を業者さんに依頼しましょう。これらの項目について、業者から提示された比較表をもとにアドバイスを受けながら、十分に比較検討しましょう。

    • 初期費用
    • 建設時における設置費用
    • 維持管理費用
    • 耐用年数など

    まとめ

    病院のLCCのうち、光熱水費などの運用コストは約8割を占めます。
    中期・長期ビジョンに立ち、40年近い生涯かかる費用を把握することが事業の成功に繋がります。

    まとめ
    • 短期的なコストではなく、トータルコストで考える
    • エネルギーコストを最適化する設備や材料を選ぶ
    • 設備投資の優先順位を明確にする
    • スタッフの動線を考慮したプランで、人件費の無駄を最小限に抑える
    • 最後に:LCCを検討するための「比較表」を業者に依頼しましょう!

    「病院のLCC(ライフサイクルコスト)の基本的な考え方」については、以下の記事で紹介していますので、あわせて読んでみてください。

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