「病院の既存建物を大改修する」場合のメリット・デメリットと注意点

    A既存改修・B同敷地建替・C別敷地建替のイメージ図

    こんにちは、代表の澤です!

    「設備も古くなったし、そろそろ病院の建替えを検討したい。」
    「建築コストが高騰する中、病院を建替えるべきか既存改修か…」

    札幌市内の医療法人さまから、こんな相談をいただきます。

    SAWA

    この記事は、次のような人におすすめです。
    病院の建替えを検討している人
    ・「既存建物の大改修」か「建替え」かで迷っている人
    ・既存大改修のメリット・デメリットや注意点が知りたい人

    この記事では、病院の既存建物を大改修する」場合のメリット・デメリットと注意点がわかります。

    病院設計20年の設計士が、実際の相談内容をもとに、病院の既存建物を大改修する際のポイントをまとめました。ご興味のある人は、ぜひお読みください。

    目次

    「病院の既存建物を大改修する」場合のメリット・デメリット

    既存の病院を大改修する場合のメリットは、以下のとおりです。

    (既存大改修のメリット)

    • 工事コストを抑えられる – 新築に比べて工事費を抑えやすい。
    • 運営コストを抑えられる – 既存のシステムを転用・拡張しやすい。
    • 現行の診療圏・患者層を維持できる – 立地が変わらないため、患者の離脱リスクが少ない。

    一方、既存の病院を大改修する場合のデメリットは、以下のとおりです。

    (既存大改修のデメリット)

    • 法規制の影響を受ける – 耐震基準や消防法などの適用により、想定以上の工事が必要になる場合がある。
    • 設計の自由度が低い – 既存の構造に制約されるため、理想的なレイアウトを実現しにくい。
    • 長期の工事による負担 – 工事期間が長引くと、患者・スタッフへの影響が大きくなる。

    「病院の既存建物を大改修する」場合の注意点

    「既存の病院建物を大改修する」場合の注意点は、以下のとおりです。

    新耐震基準を満たしているかどうか

    厚生労働省の平成28年度の調査結果によると、「全国の病院のうち71.5%の病院が耐震化の工事を終了している」とのデータが公表されています。

    新耐震基準を満たしているかどうか」は、昭和56年6月1日以降に建築確認申請が許可された建物かどうかで判断されます。

    耐震化工事は、病院にとって非常に大がかりな工事です。

    • 工事費用が高額になる
    • 建物を補強する様々な補強部材をとりつけていくため、騒音・振動も大きい
    • 工事の際には、工事範囲にかかる部屋の使用制限なども発生する 

    病院運営と収益にも影響が大きいため、耐震化工事が必要な場合は、建替も検討すべきです。

    スプリンクラーは設置されているか?

    現在、100床以下の病院ではスプリンクラーの設置が緩和されている建物も少なくありません。

    しかし、「既存の病院を改修し、さらに手狭なため一部増築も検討したい」とお考えの場合、現行の消防法に基づき、スプリンクラーの設置が義務付けられるケースが多くなります。計画の段階で、最新の法規制を確認し、適切な対応を検討することが重要です。

    スプリンクラーを設置する工事では、以下の点に注意が必要です。

    • 廊下だけでなく、病室にも工事範囲が及ぶ
    • 非常用発電機やポンプの設置も必要となる

    これに伴い、工事費用が大きくなるため、コスト面にも十分な検討が求められます。

    その他のチェックポイント

    さらに、以下の点も重要な確認事項となります。

    • 医療法に基づく廊下幅が確保されているか?
    • 病室の内法面積が基準を満たしているか?

    これらの条件をすべてクリアできない場合は、「建替え」も検討するべきです

    まとめ

    今回は、「病院の既存建物を大改修する」場合のメリット・デメリットについて解説しました。

    既存大改修のメリット既存大改修のデメリット
    運営コストを抑えられる
    工事コストを抑えられる
    現行の診療圏・患者層を維持できる
    法規制の影響を受ける
    設計の自由度が低い
    長期の工事による負担

    また、病院の既存建物を大改修する際の注意点は、以下のとおりです。

    「病院の既存建物を大改修する」場合の注意点
    • 新耐震基準を満たしているかどうか?
    • スプリンクラーは設置されているか?
    • 医療法に基づく廊下幅が確保されているか?
    • 病室の内法面積が基準を満たしているか?

    →これらの条件をすべてクリアできない場合は、「建替え」も検討すべき

    病院の既存建物の大改修を検討する場合には、このような点に注意してください。

    病院建替えの場合のメリット・デメリットと注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。ご興味のある方は、ぜひお読みください。

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